クラリネットを点検に出したら「そろそろオーバーホールした方がいいですね」って言われたこと、ありませんか?
- オーバーホールって何をしてくれるんだろう?
- どれくらいの期間預けるんだろう?
- 修理代はどれくらい必要?
それらの疑問にリペアマンがお答えします。
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名前:Satsuki
経歴:リペアマンとして楽器店に10年勤務。今はフリーランスで管楽器修理をしています。
クラリネットのオーバーホールとは?
木管楽器のオーバーホールとは、タンポやフェルト、コルクといった消耗パーツを全て取り換えて、できるだけ新品の状態に近付ける作業のことです。
タンポ等の消耗品交換の他、キイを動かすためのバネ交換や管体やキイを磨いて綺麗にする作業が含まれる場合もあります。
似た内容の「全タンポ交換」とは、下記のように区別されます。
全タンポ交換 | オーバーホール |
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全タンポ交換 キイフェルト交換 キイコルク交換 バネ交換 キイ磨き メッキ修復 ジョイントコルク交換 | 全タンポ交換 キイフェルト交換 キイコルク交換 バネ交換 キイ磨き メッキ修復 ジョイントコルク交換 |
全タンポ交換の作業内容のことを「オーバーホール」と呼ぶ店舗もあるので気を付けたいところです(ややこしいですね)
一口にオーバーホールと言っても、作業内容は店舗や技術者によって異なりますので、どこまでやってくれるのか事前に確認することをおすすめします。
おすすめのオプション/オイリング
木でできた楽器は長く使うと乾燥して艶がなくなったり、木目が目立つようになったりします。
美しい艶を取り戻し、木を長持ちさせるには「オイリング」をすると良いでしょう。
オイリングは木でできた管体にオイルを塗る作業です。
キイが付いていると、タンポやコルクにオイルが付かないように塗るのが大変なので、キイを全分解する全タンポ交換やオーバーホールのついでに頼むのがおすすめです。
いつオーバーホールすればいいの?
タンポやフェルトなどの消耗パーツが全体的に傷んできたら、部分的な修理ではなく思い切ってオーバーホール(あるいは全タンポ交換)を検討しましょう。
バネやジョイントコルクの劣化、キイの変色が気にならない場合は、オーバーホールではなく全タンポ交換で十分です。
楽器を演奏する頻度や使い方によって差が出ますが、全タンポ交換のタイミングは下記の年数が目安です。(スキンタンポの交換目安です)
部活動で毎日吹く | 6年 |
趣味で週に2~3回吹く | 6年~8年 |
毎日吹くプロや音大生 | 5年 |
バスクラは?
バスクラリネットのタンポには、サックスと同じく厚手で丈夫な革が使われているため、B♭クラリネットよりも長持ちします。
キイによって劣化しやすさに差があるので、劣化した部分だけを交換しつつ全タンポ交換は8年に一度を目安にすると良いでしょう。
楽器は使わなくても劣化する
どの木管楽器も、気温や湿度の変化によって使わなくても劣化していきます。
- 管体が割れる
- 木が乾燥しすぎて痩せる
- タンポが虫に食われる
- カビが生える
クラリネットを使わずにしまっておくと上記のような問題が出てきます。
使わない楽器でも風通しのよい場所で保管し、少なくとも半年に一度はケースを開けて換気しましょう。
クラリネットのタンポは寿命が短い
B♭クラリネットのスキンタンポは厚紙とフェルトを重ねたものを「ブラダー」と呼ばれる薄い皮で包んで作られています。
クラリネットのタンポは他の木管楽器に比べると寿命が短いです。
理由は、クローズキイが多いからです。
クローズキイとは?
指を離した時に閉じていて、押すと開くキイのこと。バネの力で閉じられています。
タンポの中にはフェルトが入っているのですが、常にバネの力でトーンホールに押し付けられているため時間とともにフェルトが潰れて固くなっていきます。
潰れて弾力を失ったタンポではトーンホールをうまく塞げず、息漏れの原因につながります。
タンポ交換の回数を減らすには?
「吹きづらくなるのはわかるけど、そんなに何回も変えたくないよ!」
その気持ち、よくわかります。
クラリネットのタンポには傷みやすい場所と長持ちする場所があります。
傷みやすいのは上管の小さいクローズキイ。その中でも特に傷みやすいのが下記のキイです。
- C#/G#キイ
- Aキイ(左の人差し指)
- G#キイ(左の人差し指)
水分の通り道にあるクローズキイは、どんなにお手入れしていても寿命が短くなってしまいます・・・
音色の統一感や鳴りムラを減らすため、楽器全体でタンポの種類を統一するのが基本ですが、あまりにも特定の箇所ばかり頻繁に交換される持ち主さんには部分的にレザータンポを使うという選択肢を提案しています。
クラリネットのタンポは3種類
クラリネットの場合、タンポを包む「皮」は3種類あります。
- スキンタンポ(ブラダータンポ)
- レザータンポ(革タンポ)
- ゴアテックスタンポ
素材によって耐久性が変わりますし、同じ楽器でもタンポの種類を変えるだけで音色が変わるので音も考慮して決めると良いでしょう。
スキンタンポ(ブラダータンポ)
最もポピュラーなタンポ。
スキンは別名「ブラダー」とも呼ばれます。
フルート・オーボエ・B♭クラ・E♭クラに使われています。
ブラダーは厚さ0.02mmの薄い素材。
ベートーヴェンが活躍していた時代は魚の浮袋が用いられていましたが、現在は牛や豚などの腸の皮を原料としています。ウインナーの皮と似たようなものです。
牛や豚を使うようになった今でも「フィッシュスキン」と呼ばれています。
薄い素材なので馴染みが良く、トーンホールをぴったり塞いでくれるのがメリットですが、水分で変化しやすいことと耐久性が弱いことがデメリット。
クセのない音色と、軽めの吹奏感が特徴です。
レザータンポ(革タンポ)
サックスやバスクラと同じく厚手の革を使用したタンポ。
スキンタンポに比べると耐久性が爆上がりします。
輪郭のはっきりした力強い音色になりやすく、やや抵抗のある吹奏感が特徴。
新品の楽器だと、レザータンポは高級機種に使用されます。
スキンタンポよりもパーツ代が高いので、レザータンポを指定すると修理代もやや高くなります。
ゴアテックスタンポ
ゴアテックスとは、ウィンドブレーカーなどに使用される防水作用のある合成素材。
レザータンポと並んで耐久性が高く、レザータンポよりも薄いのでトーンホールによくなじんで密閉してくれるとことがメリットです。
新品の楽器では、高級機種に採用されています。
スキンタンポよりもパーツ代が高いため、ゴアテックスタンポを指定すると修理代も高くなります。
オーバーホール料金の相場
クラリネットのオーバーホール料金は、楽器の状態によって価格が左右されます。
以下の表は、バネ交換やメッキ修復などを含まない「全タンポ交換」の参考価格です。
E♭クラリネット | 4万円~6万円 |
B♭クラリネット | 4万円~6万円 |
バスクラリネット/LowE♭ | 12万円~13万円 |
バスクラリネット/LowC | 13万円~14万円 |
上記の価格に加え、楽器の状態に応じてバネ交換・キイ磨き・音孔修理の料金が加わります。
使用するタンポの種類によって修理代が前後するので注意しましょう。
スキンタンポ⇒レザータンポ⇒ゴアテックスタンポの順にだんだん値段が上がっていきます。
修理代が楽器の値段を上回ることもある
入門用のモデルを使っている方によくある悩みNo.1は、楽器の値段より修理代の方が高いことです。
初心者の頃からともに成長してきた楽器に思い入れはあるけれど、楽器本体を修理代が上回るのはちょっと・・・と仰るお客様は結構いらっしゃいます。
オーバーホールや全タンポ交換が必要になるほどの期間、練習を重ねてこられたなら、演奏のレベルも上がっているはずです。
軽い吹き心地のスタンダードモデルに物足りなさを感じてくる時期でもあるので、このタイミングで買い替える方が多いです。
使わない楽器はどうすべき?
新しい楽器に買い替えると、古い方の楽器はほとんど使わなくなってしまいます。
では古い方の楽器はどうするのがいいのでしょうか?
- 予備楽器として持ち続ける
- 新しい楽器と並行して使って気分転換する
- 新しい楽器の購入資金として下取りに出す
クラリネットは新品で状態が良くても定期的な調整が必要です。
「調整に出している間、練習する楽器がないと困るので古い方の楽器をサブで持っておく」とお考えのユーザーが多いです。
同じくらい多いのが、古い楽器を下取りに出して、新しい楽器の購入資金にするケースです。
どうせ買い替えるなら妥協せず気に入った楽器を手に入れたいですよね。
「クラリネットの中古買い取りって、どれくらいの金額になるの?」
気になる方は、無料査定に出してみましょう。
もちろん査定だけしてもらって売らないという選択肢もありです。
持ち主にとって思い入れのある楽器であることは買取業者もわかっていますし、金額に納得できなければ断ることもできます。
“相見積もり”は中古売買のキホンです。
売ったあとで「やっぱりこっちのお店で売ればよかった!」と後悔しないように、いくつかの買取業者に査定を依頼して、金額を比較してみることをおすすめします。
近所の楽器屋さんに売れる?
「思い入れのある楽器を手放すなら、なじみの楽器店に売りたい」その気持ちはよくわかるのですが、すべての楽器店で買取りができるわけではありません。
中古楽器を売買するには古物商の許可が必要です。
免許を持っていない楽器店では中古楽器の買取ができないのです。
もし身近に中古楽器を取り扱う楽器店があるのなら、相談してみても良いかもしれませんね。