【フルート反射板】ずれるとどうなる?正しい反射板の位置を確認する方法|ヘッドコルクの交換時期

フルートの頭部管を詳しく解説するシリーズ、反射板・ヘッドコルク編です。
反射板・ヘッドコルクともに、管楽器修理の仕事でもしていない限り滅多に見ることのないパーツです。

「反射板の位置がズレると良くない」これは皆さんご存じかと思います。

では、ずれると何がいけないんでしょうか?

チューニングと同じように、外側にずれると全体的に低くなって、内側にずれると高くなる?

ちがいます!!

この記事でわかること
  • 反射板とヘッドコルクを出すとこうなっている
  • 反射板の位置がずれるとどうなる?
  • コルクが使われる理由
  • 反射板・ヘッドコルクのカスタムパーツ
目次

反射板とは?出して見てみる

よく見る機会が無いと思うので、まずは見てみましょう。
とりあえず外しますね(リペアの知識が無い方はマネしないでください)

クリックで拡大できます。無断転載はしないでください(記事のURLをシェアするのはOKです)

こんな風になっています。

円盤状の反射板の中央に長いネジが柱のように立っていて、そこにヘッドコルクが差し込まれて、クラウン側からフタをしてコルクが動かないように固定されています。

反射板の材質は、多くのメーカーで頭部管の管体と同じ材質で作られています。

寸法さえ合えば材質違いの反射板をオプションで入れることもできますが、楽器技術者の手を借りないと付け外しができないので気軽に変更できるオプションパーツではありません。

反射板・ヘッドコルクの交換は、簡単そうに見えて実は奥が深い作業です。
専用の道具も必要ですし、コルクを入れる向きやフタの締め具合で楽器の鳴り方が左右されます。
自分で付け外しするのはおすすめしません。技術者に任せましょう。

反射板の正しい位置

反射板の位置は、基本的に唄口中央から17mmです。

現在普及している金属製のフルートを発明したテオバルト・ベームが活躍していた頃に、反射板の位置をどこに定めたら良いか試行錯誤され「17mmが最適」という解に至ったそうです。そして、その数値は現代に至るまでほとんど変わっていません。

ほんの少し、違うこともある

反射板から唄口中央までの距離は基本的に17mmですが、メーカーによっては多少前後します。

その楽器に合った反射板の位置は、掃除棒の溝で知ることができます。
この溝は飾りではなく、反射板の位置を測るための線です。

反射板位置の確認方法

反射板の位置は、掃除棒の溝が彫ってある側を頭部管に入れて確かめます。

反射板に掃除棒が触れた時に、溝が唄口の中央に来れば正しい位置に反射板がある、ということになります。

反射板の位置設定はメーカーごとに微妙に異なり、それに合わせて掃除棒の溝の位置も違います。
位置確認をする場合には、楽器購入時に付属していた掃除棒を使いましょう。

反射板の位置がズレるとどうなる?

反射板がずれると起きる不具合
  1. オクターブの音程が悪くなる
  2. 音がぼやける、かすれる
  3. 鳴りムラが出る

反射板が基準の位置からズレると、音程や音色に上記のような影響が出ます。

あまりオススメはしませんが、もし興味があれば意図的に少し反射板の位置を変えて吹いてみると変化が実感できます。

マニア向けの豆知識

一応、基準の位置が定められているのですが…
やっぱり楽器には個体差があって、実はちょっとずらした方が吹きやすくなる場合もあります。

マニアの中には、ご自分で心地よい位置を探って意図的に位置を変えている方もいます。

(そうとは知らず元の位置に戻してしまって怒られるのは新人リペアマンあるあるです笑)

ヘッドコルク

左がフルート用、右がピッコロ用です。
パーツで見比べるとやっぱりピッコロって小さいんだなって思いますよね(しみじみ)

コルクを使う理由

反射板の位置を固定するのに一役買っているヘッドコルクですが、コルクが好んで使われる理由は色々考えられます。

まず弾力があって使いやすいこと。
フルートの頭部管は、クラウン側が細くなった円錐管です。

よく見るとクラウン側が細くなっています。
フルートをお持ちの方は練習のついでに見てみてくださいね。

さて、円錐形状の頭部管ですが、円錐具合は楽器によって微妙に異なります。
コルクは非常に弾力があって柔らかい素材なので、どの楽器にも柔軟にフィットして隙間なく塞いでくれます。
そのため、気密を高く保つことができます。

コルクには消臭効果も!

実は、コルクには消臭効果があります。
クラリネット・サックス・金管のマウスピースと違って、フルートの頭部管は気軽に丸洗いできないので嬉しい効果です。

ヘッドコルクの交換目安

弾力が最大の利点であるコルクですが、狭いところに長期間押し込まれていると徐々に縮んできます。
呼気による吸湿と乾燥の繰り返しも縮む一因です。

交換の目安は、あえて時間で表すなら2~3年に一度です。
でも、3年経ってもまだ十分に弾力があるならまだ交換しなくても良いです。

クラウンを手で締めてみて、軽い力でも回り続けてしまうようであれば替え時です。
また、頭部管内側の水分を拭いた時に反射板の位置がずれてしまう場合も替え時です。

軽い力って、どれくらい?

ペットボトルのキャップを閉める時の力加減を想像してみてください。

「キャップを閉める時」の力加減が”軽い力”の目安です。
ペットボトルのキャップを閉める時の力でクラウンがくるくる回り続けてしまうなら、それは明らかにコルクが痩せています。

コルクが正常なら、ペットボトルのキャップを閉めきる時と同じくらいの力加減でクラウンも留まるはずです。

コルク以外のオプションパーツ

専らコルクが使われますが、古い楽器ではコルクの代わりに黒檀などの木が使われていたりもします。

また、現在でも水晶や象牙などのオプションパーツが販売されているようです。
アトリエヤナギサワさんが色々なカスタマイズを提案されているので、興味がある方は調べてみてください。


フルートの他のパーツについても解説しています。
よろしければ併せてご覧ください。

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