フルートの頭部管を詳しく解説するシリーズ「リッププレート編」です。
フルートの中でも目を引く存在のリッププレート。
平型・波型・羽根付きなど様々な形状があり、その違いは吹奏感を左右します。
滑り止め効果で評判の良い「リップ彫刻」についてもまとめました。
楽器選びの参考にお役立てください。
頭部管の各部名称

リッププレートとは
吹く時に口を当てる部分、小判型のパーツがリッププレートです。
リッププレートには様々な形状があります。
- ゆるやかな曲面の「平型」
- 唄口に息を集めるように大きく波打たせた「ウェーブタイプ」(波型)
- 完全に水平な「フラットタイプ」
現在、最もスタンダードなタイプは「平型」です。
形状を比べてみる



写真はプリマ楽器Webサイトより三響フルートのカタログからお借りしました。
フルートメーカー各社のHPを拝見しましたが、三響フルートとパールフルートは頭部管の種類が豊富ですね。
形状による吹奏感の違い
平型やフラットタイプは発音・音色・強弱に差をつけやすく、コントロールしやすい所がメリットです。
また、クセが少ないので誰にでも扱いやすいと言える形状です。
多くのメーカーがこのタイプのリッププレートを採用しています。
波型(ウェーブタイプ)は吹いた時の反応が非常に良いです。瞬発力に長けています。
軽い力で発音したい方にとっては魅力的な特徴です。
波型は反応が良い反面、コントロールがシビアとも言えます。
ほんの少し吹き方を変えただけで音が大きく変化するので、吹く人によって向き・不向きが分かれるリッププレートです。
しかし、ハマる人にはハマる形状です。
リッププレートの形状の違いは演奏者本人の吹き心地を左右しますが、「聞く人に届く音」に大きな変化はないように感じます。
材質による違い
管楽器は、口に近い部分であればあるほど音色や吹奏感に関する変化が大きくなります。
フルート全体のうち、リッププレートとライザーの材質を変えただけでも音色や吹奏感には差が出ます。
軽やかな吹き心地が魅力の洋銀(あるいは白銅)のフルートでも、リップとライザーが銀に変わるだけで、銀の持つ柔らかさ・しなやかさが加わります。

フルートの材質をカスタマイズする順序は、
- ライザー
- リッププレート
- 管体
- キイ
の順です。
銀製の頭部管のうちリップとライザーを金製に変えると、ちゃんと「金成分」が加わります。
洋銀+リップ銀と違って、金製パーツは色も変わるので見た目にも華やかさがあって良いですね。
「金成分」って何?と思ったかもしれませんが、吹けばわかります。笑
(あ、ゴールドがちょっとだけ居るな)と感じることができるはずです。
金特有の歯切れの良さ・力強さがプラスされて、吹いた時の抵抗もやや増します。
もし銀の楽器を軽いと感じていて、「でもオール金は予算が厳しいよ~」とお悩みの方はリップ・ライザーのみ金製の頭部管を試してみることをおすすめします。
金の純度による違い
金の純度は「24分率」で表されます。

音の変化としては、純度が高いほど重厚で落ち着いた力強さがあり、純度が低くなるにつれて明るく華やかな印象になります。
リッププレートの彫刻
なぜこの部分に彫刻するのか?彫刻する目的は2つあります。
- 装飾
- 滑り止め
美しさと機能性を兼ね備えているのがリッププレートの彫刻です。
絵柄は様々なデザインが用意されています。オーダーしてオリジナルの絵柄にすることもできます。
フルートに用いられるのは花柄や植物柄が多いです。鳥も時々見かけます。
彫刻の方法は2種類
フルートに限らず、サックスなど管楽器の彫刻には2種類の方法があります。
- 機械彫り
- 手彫り
1.機械彫り
機械彫りとは、レーザーやリューターなどで彫る方法です。
彫った線が均一でムラが無いのが機械彫りの特徴です。
設備さえ整っていれば加工費用が安く済むので、手頃な価格でオーダーできるところがメリットです。
2.手彫り
もう一つは手彫りです。職人が彫刻刀を使って彫ります。
手彫り彫刻は、線に自然な強弱があって美しいです。
手彫りの線は光を複雑に反射するのでステージで照明を浴びた時に機械彫りよりも輝いて見えます。
また、彫った線に角が残っているので滑り止め効果が高いことがメリットです。
滑りにくさは「手彫り>機械彫り」です。
機械彫りも、彫刻無しに比べれば滑り止め効果を感じられます。
しかし、手彫りリップの滑りにくさを知ってしまうと「あ、機械彫りってちょっと滑りやすいんだな」と物足りなさを感じてしまいます。手彫りリップ、すごく良いです。
後から彫刻できるの?
リッププレートの彫刻は購入後に後付けで加工してくれるメーカーや職人さんもいます。
(材質やメッキの有無で後加工できない楽器もあります)
汗で滑る、とお悩みの方は郵便切手や滑り止めパッチで対処するのも良いですが、彫刻を検討してみるのもアリだと思います。
フルートについて、他のパーツについても解説しています。
よろしければこちらもご覧ください。


