【フルート音孔】ドローンとソルダードの違いとは?音の特徴と見分け方

フルート選びで迷うポイントの一つ、トーンホール。

ドローン(引き上げ)ソルダード(ハンダ付け)は何が違うの?どう違うの?

その疑問にお答えします。

この記事でわかること
  • 写真で比べるドローンとソルダード
  • ドローン/ソルダードの製造工程の違い
  • 音色や吹奏感の特徴を比較
目次

トーンホール(音孔)とは?

トーンホールは別名「音孔」と言います。読み方はオンコウです。

フルートに限らず、すべての木管楽器に備わっています。
指で直接塞ぐのもキイで塞ぐのも、音程を変えるために開けられている孔は全てトーンホールです。

リコーダーや篠笛に開けられている指で塞ぐ孔もトーンホールです。

フルートのトーンホールは2種類

フルートのトーンホールは2種類あります。

  1. ドローン・トーンホール(別名:引き上げ音孔)
  2. ソルダード・トーンホール(別名:ハンダ付け音孔)

「洋銀=引き上げ」ではない

軽い力でもよく響く洋銀製のフルートは、初心者に選ばれやすい楽器です。

洋銀フルート=初心者=低価格=引き上げ音孔と思われがちですが、洋銀製のソルダードモデル(ハンダ付け仕様)もあります。

ソルダードの洋銀フルート
  1. ミヤザワフルート…coSmoシリーズ
  2. 桜井フルート…金属製フルートの全モデルをソルダード仕様で製作

それでは引き上げ・ハンダ付け、それぞれのトーンホールについて解説します。

ドローン・トーンホール

ドローン・トーンホールは別名「引き上げ音孔」とも言います。
その名の通り、管体に開けた小さな穴から、管体自体を引き上げて成型されます。

粘土で再現するとこんな感じです。

小さな穴を開けて・・・
グイっと引き上げて作る。

ドローン/見た目の特徴

見た目の特徴は、タンポに接する先端部分がクルッと丸く仕上げられているところです。
端面を丸く仕上げる加工のことを「カーリング」と言います。

カーリング加工をする理由は、タンポを傷めないためです。

引き上げで作ったトーンホールは厚みが薄く、フチの高さも不揃いでギザギザと尖っています。
このままではタンポが破れてしまうので、外側に丸めて当たり方を柔らかくしています。

キイを外したところ
下から見るとカーリングがよく見えます

ドローンの音色・吹奏感の特徴

引き上げタイプは管体とトーンホールが一体型なので、軽やかによく響きます。

ソルダードに比べると明るい音色です。
また、ソルダードよりも楽器全体の重量が軽く、体への負担が少ないことも利点です。

鳴らしやすい・楽器が軽くて疲れにくいという特徴から、初心者向けモデルに多く採用される仕様でもあります。
もちろん、軽やかで明るい音色を好むプロの方にも選ばれています。

ソルダード・トーンホール

ソルダード・トーンホールは別名「ハンダ付け音孔」と呼ばれます。
リング状のパーツを管体にハンダで溶接して作られます。

洋銀製・銀製はハンダ付けされますが、金製はロウ付けで作られています。
金製の楽器は管厚が薄いので、強度を保つためにハンダよりも丈夫なロウ付けが選択されます。

ソルダー(solder)は「ハンダ」という意味ですが、ロウ付けで作られる金製の楽器もソルダードモデルと呼ばれます。

ソルダードはこうして作られる

クリックで拡大(無断転載禁止です)

粘土で再現するとこんな感じです。

青い部分が管体、ピンクがトーンホールです。

一言で言うと「外付け」です。

ソルダード/見た目の特徴

ドローンと違って、トーンホールの先端はカーリングしていません。

ソルダードのトーンホールは別パーツを作って後付けするので、自由な形状で作れます。
ほどよい厚みを作り、フチもタンポを傷めない形状で作ることができるのでカーリング加工をする必要が無いのです。

ソルダードその1
ソルダードその2

ソルダードタイプ最大の利点は、トーンホールの厚さ・高さ・材質が自由に選べるところです。

ドローンは管体からトーンホールを引き出す形で作られるので、トーンホールの厚みは管体よりも絶対に薄くなります。

一方、ソルダードはトーンホールを管体とは別のパーツとして作るので、厚み・高さ・材質を自由にカスタマイズすることができます。

ソルダードの音色や吹奏感の特徴

ソルダードのトーンホールは管体よりも厚い材料で作られているため、ドローンタイプよりも楽器の総重量は重くなります。

吹いた時の抵抗と楽器の重量は比例するので、抵抗は強めです。
吹きごたえがある、と言えます。

しかし、それは決して「苦しくて吹くのがツライ」という類の抵抗感ではなくて、むしろ「安定感があって吹きやすい」と感じるユーザーが多いです。

ドローンが「ふわっと広がるような響き」なのに対して、ソルダードは「タイトにまとまる」感じがします。
音の境目がはっきりしていて、特に早いパッセージの時に音がぼやけないところがソルダードの良いところです。

ソルダードのここが困る

レスポンスの良さと安定感が魅力のソルダードですが、デメリットが2つあります。

  1. 価格が高い
  2. ハンダが経年劣化する

1.価格が高い

音孔のハンダ付けは、高い技術を必要とします。
製作に手間と時間がかかる上、トーンホールを別パーツとして作ると使う材料も増えるので、楽器の値段は高くなります。

2.ハンダが劣化する

音孔の溶接に使うハンダは経年劣化します。
フルートは数十年、丁寧に扱えば100年以上使うこともできる楽器ですが、年月とともにハンダが傷んで溶接部分が剥がれたり穴が開いたりする場合があります。

もしそうなってしまったら一旦取り外して再度溶接をやり直す、という修理が必要になります。

とは言え、10~20年で傷んで使えなくなるような個体は滅多にありません。
楽器を新品で購入する際は、先のことを考えずに購入して大丈夫です。

オールドと呼ばれる古い個体を中古で購入する際には、ハンダが劣化している可能性も頭の片隅に入れておくと良いでしょう。

まとめ:並べて比較する

最後にドローンとソルダードの違いを並べて比べてみます。

特徴ドローン/引き上げソルダード/ハンダ付け
見た目フチを丸くカーリング加工
音孔が薄い
カーリング無し
厚みのある音孔
音色・吹奏感明るく軽やか
ふわっと広がるような響き
安定感があり落ち着いている
音の境目がはっきりしている
重量軽いやや重い
価格安価高価

音孔は「吹き手」にとって重要な選択

どちらのトーンホールのフルートか、演奏を聞く人にはほとんど区別がつきません。
(よほど仕様の差に詳しい人が聞けばわかるかもしれません)

しかし、吹く人にとっては大きな差を感じる要素です。

  • 持った時の重さ
  • 吹いた時の抵抗
  • 音の切り替わり方

この辺りに大きな違いを感じるかと思います。

特に、音の切り替わり方(レスポンス)は細かいパッセージを与えられがちなフルートにとって重要なポイントです。

試奏する際は、音階などで隣り合う音程のつながりを確認する他、ド⇔ソなどの跳躍も試してみると、音孔によるレスポンスの違いを実感しやすいと思います。


他にもフルートの構造についての記事があります。
マニアックさには定評があるので、あわせてご覧ください。

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