見た目はシンプルなフルートの頭部管。
掘り下げれば奥が深いパーツで、頭部管だけを専門で作るメーカーもあるほどです。
- フルートの選び方を知りたい
- 頭部管をカスタマイズしたい
- 今の楽器がちょっと物足りないけど、新しい楽器は買えない
このページでは頭部管について深堀りして解説します。
「そんなの知ってるよ~」と言われないように、なるべく詳しく書きますのでぜひ最後までご覧ください。
フルートの頭部管/各部名称


クラウン(ヘッドキャップ)
頭部管の先端にあるパーツが「クラウン」です。
別名「ヘッドキャップ」とも呼びます。
外側の“見える部分”には楽器ごとに装飾が工夫されているお洒落パーツでもあります。
しかし、お洒落のために付いているわけではなく、クラウンの形状や材質は音色や吹奏感を大きく左右します。
クラウンについて詳しくは以下の記事をご覧ください。
リッププレート
吹く時に口に当てる小判型のパーツが「リッププレート」です。
リッププレートは演奏者本人が吹奏感の違いを実感しやすい部分です。
リッププレートについて詳しくは以下の記事をご覧ください。
ライザー(チムニー)
実はよくわからないパーツNo.1のライザー。
「ライザーって、どこにあるの?」と、しばしば質問されます。

唄口を形作っている「壁」の部分がライザーです。別名チムニーとも言います。
チムニー(Chimney)とは「煙突」という意味です。
なお、メリー・ポピンズで歌われるチム・チム・チェリーは、主人公の親友が煙突掃除屋として働く様子を描いた歌です。
ライザーについて、詳しくは以下の記事をご覧ください。
唄口(マウスホール)
息を吹き込む穴の部分を「唄口」と言います。
唄口の大きさと音量は比例すると言っても良いでしょう。
小さい唄口は柔らかい音色で大人しく品のある音、大きい唄口は音量が出やすくパワフルな音になります。
大きめの唄口の中でも特に「スクエア型」と呼ばれる四角形の唄口は、少ない息でも大音量が期待できます。
唄口の脇が高くなっている「ウィング」
唄口の両脇が高くなっているものもあります。
このパーツは「ウィング」「羽根」「アドラー」などと呼ばれています。
ウィングが付くことで息を唄口に集中させることができ、音量も期待できるとのこと。

こちらの写真は頭部管だけを巻管ハンドメイドで製作しているY.L.Songのカタログからお借りしました。
他には、ラファンの「アドラー」や、ムラマツの「ツバサリップ」が有名です。
反射板・ヘッドコルク
楽器の中に入っていて普段見ることのできないパーツです。
出してみるとこんな感じです。

ヘッドコルクの交換時期・反射板の正しい位置・カスタムパーツについては、以下の記事をご覧ください。

管体
管体とは、パイプ部分全体のことを指します。
頭部管の管体は緩やかなテーパーになっており、テーパーのかかり具合は音色や吹奏感を左右します。
テーパーとは?
円錐のような先細り形状のことです。

クラウン側が細く、胴部管に向かって段々太くなる形状になっています。
どの地点から・どれくらい太くなるのかの差で音に違いが出ます。
管体のテーパーについて、特にヤマハは色々な選択肢を用意しています。
ヤマハのフルート頭部管ページはこちら。
ちなみにピッコロの頭部管は全体の太さが一定の円筒管です。
ジョイント付近が膨らんだデザインが多いので見かけに騙されやすいですが、管の内側は円筒形です。
胴輪
ジョイント部分の境目に付いているリングは「胴輪」と呼ばれるパーツです。

胴輪は全ての頭部管に付いているパーツではありません。
むしろ付いていないモデルの方が多いです。一部のハンドメイドモデルに採用されています。
胴輪が付いていると、やや抵抗が増え豊かな音になります。
ジョイント部分(接続部分)
胴部管に差し込む部分のことを「ジョイント部分」と言います。
楽器本体と付属の頭部管は、その組み合わせでジョイントが丁度いい固さになるように調整されています。
フルートは頭部管を付け替えて使うことができますが、ジョイント部分のサイズが合うことが条件です。
サイズの合わないものは、管を膨らませたり縮めたりして調整することができます。
この調整を「ジョイント調整」あるいは「嵌合調整」と言います(嵌合は“かんごう”と読みます)
サイズが合わない時は・・・
- スルッと抜けてしまう
- 吹くと勝手に角度が変わってしまう
- ジョイントがきつくて入りにくい
頭部管のみを後から購入してサイズが合わなかった場合は、修理を受け付けている楽器店でジョイント調整を依頼しましょう。
一時的な方法
ジョイント部分にアルミテープやマスキングテープを貼って固さを調節するケースもありますが・・・
- テープを貼る位置によって鳴り方が変わる(鳴らなくなる)
- 頭部管と胴部管が均一に接地しない=振動が効率よく伝わらない
など、楽器の性能が最大限に発揮できない場合があるのでオススメしません。
試奏で一時的に調節したい場合はテープで対応しても良いと思いますが、長期的に使用する場合は楽器店で調整しましょう。
見かけはシンプルな頭部管でも、細かく見れば様々なこだわりが詰まっていることが伝わったでしょうか?
楽器選びで迷われている方々のお役に立てましたら幸いです。
